相続税の重圧 焦る大地主が標的に13

この前代未聞の、土地を買ったふりをして、手付金を渡したうえで、その全額を渡さずに奪い、のちに同額と利息を大地主に、支払わせた真相とは?

まず、読者諸兄には、公証人役場の風景を思い出してほしい。3000万円の束をわざわざテーブルの上において契約に臨んでいることを。これは、現金でないと、振り込みや、預金小切手等では、足がつくし、あとで奪えないからである。写真を撮ったのは、動かぬ証拠を演出するためである。これを見た人は、誰でも現金を昭子が受け取ったとみるだろう。では、昭子が署名した契約書は何だったのだろうか?すべて、偽の契約書だったのである。おそらく秀雄か街金業者が作成した不動産売買契約書だったはずである。これはすべて後に秀雄が処分していた。実印を昭子が秀雄に渡して押印していたのは何の書類だったのか?秀雄は3000万円の束の向こうで、昭子が見えないところで、何か押していた。昭子はその時、何かおかしいと感じながらも、秀ちゃんのことだから間違いはないだろうという、心理学では、何とかという心理状態に陥っていた。船の復元力みたいな、つまり、船が傾いても、元へ戻そうとする船自体の作用みたいな心理状態であった。実は、この時、秀雄は、委任状に昭子の実印を押していたのである。これこそが、街金業者ゆえに発想できたのだが、では、何の委任状だったのか?「金銭消費貸借契約公正証書」の委任状だったのである。つまり、街金業者のたくらみは、秀雄の経営する高橋建設が返済不能になっている2500万円を回収するため、土地売買ではなく、昭子が、藤沢商事から3000万円借りた、という公正証書を交わそうとしていたのだ。貸借が成立していれば、借りた側の個人または法人は、期限までに返さなくてはならない。判決に従って、昭子は借りてもいない3000万円プラス利息を付けて藤沢商事に返すよう判決が出た。判決申し渡しの際、裁判長は、

「原告が主張していることが真実と推測されるが、そろっている証拠、証言を基に判断せざるを得ない。これらを覆すだけの証拠がない。実印を押させた原告に問題があると言わざるを得ない。」というような言葉を述べた。では、これを決定づけた証拠とは何だったのだろうか?再度思い出してほしい。領収書を昭子が買い手に渡した後、秀雄は、昭子に20分ほど待っていてほしいと言い残して、藤沢商事の社長と秀雄の二人で公証人のもとへ行っていたことだ。この時、3000万円の貸主となる、藤沢商事の社長と、3000万円の借主昭子の代理人の秀雄が、「金銭消費貸借公正証書」の締結をしていたのだ。ここで、昭子の何一つ知らないことが、秀雄と藤沢商事社長と公証人の三者で行われていたのだ。公証人は善意、つまり書類に基づいて業務を執行したに過ぎない。つまり、代理人の成立要件は、昭子本人の実印を押した委任状と、昭子の印鑑証明書、それと、代理人の、身分を証明するもの、この時は、秀雄の運転免許証であった。

再度説明するが、お金を借りることを代理人に委任しています、それを委任状に記載し、その証拠に、印鑑証明書を付けます、ということが行われていた。公証人は、これを承認せざるを得ない。ここに、完璧に事件が成立した。しかし、犯罪者側にとっては、お金を貸しただけでは、利息を儲けるだけで何の解決にもならない。したがって、その金を渡してはならなかったのだ。貸したふりをして、全額戻してもらえれば、丸儲けになるのだ。そのうえ、街金業者が用立てた3000万円も無事戻ってくる。これを演じなければならないため、秀雄は終始緊張していたのだ。500万円という秀雄の取り分のためにも、やり遂げなければならない、失敗したらどうしようという脂汗を伴う緊張だった。昭子は、おそらく、一般の今回だけの付き合いの業者だったら、お金を肌身離さず持っていて渡さなかっただろう。そもそも、その前に、現金取引は、不動産売買の場合、少額の手付金は別だが、ほとんど行われてない。昭子は、まだ銀行が開いていた時間だったので、銀行へ預けることもできたのだ。おそらく、昭子が銀行へ寄ると言った場合に、こうするようにといった想定問答も行われていたのだろう。昼前後の人のとおりが少ない時刻を選んで、自宅敷地で現金を奪ったのも周到に練られていた。広い敷地を持つ昭子の玄関前では証人は皆無だった。家人がだれもいなかったのは偶然であったろうし、銀行によると言わなかったのもそうであったろう。

のちに昭子が思い出して言うには、

「そう言えば、途中で、公証人が耳元で、「奥さん、大丈夫ですか?お金を借りたんですか?」と言ってきたんだけど、何を言っているのかわからなかったので、愛想笑いをしたのを思い出した。」と。この公証人の行動は、犯罪者側にも誤算だったはずだ。しかし、スルーされた。これも犯罪者側にとって幸運だった。

 

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