相続税の重圧 焦る大地主が標的に3

しかし、家を購入前は、細々とだが、銀行から土地購入資金を借り入れて、親しい工務店には完成払いということで、建築を依頼し、運良く、完成前に売れて、借入金や建物代をすべて完済しても一家が何か月も暮らすには十分の資金が手元に残った。家を購入してからは、建売物件が売れたときは資金もうまく回って銀行や工務店に返済できていた。が、あるとき、いい物件が市場に出て、どうしても欲しくなって競争相手の出し値より少し高く買ったことがあった。そこで秀雄は、いい物件なので、いつもの顧客対象のレベルを上げて、少し高い物件を手掛けてみようと思い、少しだけ高級物件を建ててしまったことがあった。まったくマーケティングの知識がないので、市場調査もせず、勘だけで実行してしまったので、案の定、まったく売れなかった。完成2か月後、値下げをして処分することにした。次の物件のことがあるので、銀行と工務店には不義理をすることができなかった。しかし、売上金と自己資金合わせても、返済元金には300万円ほど不足していた。こういう状況になると、金利の安い銀行は1円も貸してくれなくなる。しかたなく、横浜の、いわゆる街金業者から高利の300万円を借りて、銀行と工務店に支払った。これが転落の始まりだった。街金業者にも色々ある。10日で1割の利息を取る悪徳業者から、銀行金利の数倍の金利で済む業者までいる。子供の幼稚園の月謝、住宅ローンの返済、その他家計費の上に、街金業者に金利だけでも支払うとしても、まったく無理があった。借りて数か月後には全く払えなくなってしまった。毎日矢の催促がある。未払いの利息だけでも莫大な金額になっていった。毎日の取り立てに、土下座をして許しを請い、何とか店から引き上げてもらうという地獄の日が続いた。サラ金や他の街金から少額を借りてはしのいでいたが、資金繰りの気苦労からまったく仕事はできなかった。とうとう元利合わせて、2500万円にまで膨らんでしまった。

そのころ街金業者の手下がやってきて、秀雄に、すごんで言った。

「お前なあ、もう返すのは無理だろう。なんか返す当てでもあるんかいな」

「いえ、まったくありません。許してもらうにはどうしたらいいんでしょうか?なんでも致します。どうかお願いします。」いつもより手下が凄みのある様子だったので、秀雄はいつも以上に震えて言った。

「生命保険はいくら入っているんだ。」

「いえ、保険料が支払えなくなって、今は全く入っていません。」数か月前に掛け捨てであったが、失効していた。幸運だった。

「じゃあ死んでもらうというのは、こっちにとっても困るわけだな。」

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