相続税の重圧 焦る大地主が標的に7

明けて翌日、9時過ぎを見計らって、昭子は秀雄に電話をした。

「もしもし。おはよう。昨日の話だけど、横浜から夜遅く来てくれてね、みんなが話を進めてくれ、っていうことになったよ。秀ちゃんよろしく頼むね。それと、印鑑証明は今日の夕方にはそろうから、心配しなくていいよ。今朝、明夫さんに委任状を渡して頼んでおいたから。」昭子の家は広くて、昨日の夜より、より寒く感じていた。居間にある電話で話しているが、暖房もまだ効果を発揮しておらず、舌もよく回らない感じを持ちながら、昭子は秀雄と話していた。

「おばちゃん、早速にありがとね。今日中に書類は完成するので、午後買主に連絡して日程を決めるからね。詳しいことは午後決まり次第電話をします。」秀雄も心なしか、喜んでいるように昭子は感じた。

その夜、昭子とかなこ夫婦は、印鑑証明書を確認しながら、当然ながら、売買のことについての話題に入っていった。

「でも、なかなか売れなかったのに、よく売れたね。しかも相場より25%も高くね。信じられないよね。よくやってくれたよ、秀ちゃんは。でも、買うほうはそんな高値で買って、商売になるのかね。そっちが心配になってきちゃったけどね。」かなこは嬉しそうに言った。隣の明夫も嬉しそうにうなづいていた。

「本当だよね。私も、相場より高くてもすぐに売れるって思っていたけど、途中甘かったと反省もしていたんだけどね。お父さんの残してくれた土地を、なるべく売りたくはないからね。ついつい欲を出してしまったんだけど。本当に売れてよかったよ。」皆、契約はまだでも、秀雄が持ってきた話なので、売れたも同然と思っていた。

「どんな人なんだろうね?不動産会社なのかね。個人は買うわけないからね。水道や下水・ガスを引かなければならないし、道も作らなければならないから大変だもんね。」かなこは、買主のことは何も聞いていなかったことを思いだして、昭子に聞いてみた。

「なんでも、秀ちゃんが言うには、横浜の金持ちの不動産会社らしいよ。大地主が売りに出す土地はできるだけ買いたいらしいよ。」昭子は秀雄に聞いたままを話した。

「何でなの?」まったく、かなこにその理由はわからなかった。

「大地主は、相続の時しか土地を売りに出さないらしく、土地の履歴もよく、土地の形もいいかららしいよ。造成して、しばらく置いておけば、時代が相場を押し上げてくれる、とかなんとか秀ちゃんが言っていたよ。眞にうちがその通り相続で売りに出したんだもんね。」

「蛇の道は蛇だっていうことかしらね。でも、地元の業者が坪20万円までだと言っていたんだよね。」昭子はうなづいた。

「じゃ、どっちが相場なんだろうね。」素直な疑問をかなこは言った。内心、売れる価格が相場なのではと思っていた。

「相場の先取りみたいなことなんだろうね。そこが不動産の難しいところかもしれないね。お父さんも全然土地を売らなかったから、そういうことも、何もかもわからなかったよね。でも本当に良かった。」かなこ夫婦もうなづいていた。

 

 

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