不動産小説 代理人21

7時ころなら退社できそうだとのことだったので、指定された喫茶店へ行き、鈴野の来るのを待った。7時15分に鈴野が来た。なんか不機嫌そうに見えた。

「やあ、お待たせしてすいませんでした。帰り際に電話が入ってしまったものですから。」

「どうぞ気にしないでください。早くお耳に入れたいことができましたので、急で申し訳なかったのですが、お時間をいただきました。」

「この次お会いするのは、警察からの連絡があってからと話していたので、電話をもらったときは、少し驚きました。何か進展があったのですか?」鈴野はあくまでもいぶかしそうな表情を崩さなかった。

「まあそんなようなものです。実は、あれからいろいろ反省しました。証拠はないんだと失礼なことまで申し上げ、誠に申し訳ありませんでした。」座ったまま、前回と同じようなお辞儀をして、許しを乞うた。そして、さらに続けた。

「今回の私のミスは、義務違反に相当するとの見解に至りました。仮に裁判になったとしても、全額弁償するのは目に見えています。そうである以上、弁護士費用も無駄になります。何よりも、お客様に大変ご迷惑をおかけしましたことが一番反省すべき点です。なので、迷惑料として10万円を支払わさせてください。本当にご迷惑をおかけし申し訳ない気持ちでいっぱいです。」また頭を下げた。鈴野は、少し表情を崩し、

「本当でしょうか?私は万が一、全額が戻らなければ、訴訟も視野に入れていました。今お話をお聞きし、外崎さんに頼んでよかったと思いました。それで万事解決ということでこちらもお願いしたいと思います。早々にありがとうございました。」鈴野も頭を下げた。外崎も安どの表情を見せた。

「当然のことと思っています。つきましては、示談書を用意しまして、お互いそこに署名押印をし、同時に私が鈴野様に260万円お渡しするということでいかがでしょうか?」

「はい、それで結構です。私が店に伺います。勝手言って申し訳ありませんが、週末にお願いできますか?」

「もちろんです。では追って連絡させていただきます。」

20分ほどで、喫茶店をあとにして、そこで分かれ、それぞれ家路を急いだ。

弁護士から翌日には示談書(案)が、メールで送られてきた。外崎が送った項目に若干足して作成されていた。要旨としては次のようだった。

  1. 示談に至る経緯
  2. 260万円支払う
  3. 10万円は迷惑料250万円は鈴野の損害金
  4. 今後一切異議を申し立てない
  5. 今後刑事告訴をしない
  6. 山下が逮捕され、損害金が回収された場合は、全額外崎へ渡す

外崎は全文を吟味して、承諾をし、弁護士へ電話をした。弁護士に署名押印してもらい、外崎の店へ郵送してもらうことにした。

示談書が届いてすぐに外崎は鈴野へ電話をした。次の日曜日に外崎の店で示談書を締結することになった。

 

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