不動産小説 代理人2

「ではこうしませんか、私は初めて不動産を買いたいと思ったわけですが、こちらにお伺いする前に、2か月くらいで見つかればいいなと思いました。ですから2か月間はほかの業者さんへは絶対行きません。ですから一生懸命探してください。」これを聞いて、外崎は、業者みょうりに尽きる。絶対探して見せると心に誓った。

「ありがとうございます。絶対に頑張ります。つきましては、お話しした詳細のことですが、よろしいでしょうか。」

「あっ!まだ名前も聞いてもらっていませんでしたね。あはははは…」外崎は少しほっとした。少しは信用してもらえたな、と。

「ではまず、お名前は?」

「鈴野 正次郎と申します。」

「生年月日はよろしいでしょうか?」

「昭和57年2月28日です。35歳です。」

「不動産を取得するには絶好のお年ですね。」外崎は日ごろから思っていることを言ってみた。

「そうなんですか。それを聞いてよかったと思います。」

「しかし、それは様々なお客様お一人おひとりごとに違ってきますけどね。いずれそんなこともお話しできればいいなと思っています。」外崎は一瞬余計なことを言ってしまったなと思った。それは、もう無駄口をたたいている暇はなく、属性を早く聞き出し、媒介契約締結にもっていかなければと焦り始めていたからだ。

「さて、ご家族構成は先程お聞きしました。次にお勤め先と年収を教えていただけますか?」先程同様、これに答えていただけなければ、冷やかし客とみなすよ、といった感じで、少し強めにしかし丁寧な物言いで尋ねた。

「私は、大日本商事に勤めています。年収は、昨年ベースで530万円ほどです。」外崎は、「おや、思ったほど多くはないんだなと思った。しかし、住宅ローンを借りて、後々失敗をしないような物件を探さなければならない。それには自己資金の額が重要だ。「恐れ入りますが、自己資金はいかほどご用意いただけますでしょうか。」

「はい、全部ひっくるめると、1200万円ほど持っています。でも、一部は自宅建築資金の頭金に回したいと思っています。その点もご教示いただきたいのですが。」客は客で、もしこういった面で知識を持っていなければ、お断りだ、と思って言っている。外崎はベテランだけに、すぐそれを察知して、うんちくを垂れた。

「わかりました。一般的に、住宅ローンの融資額は、年収、勤務先等によって若干左右されますが、土地購入の場合は、土地代金の70%ほど、建築費の場合は、やはり、建築資金の70%ほどとなっています。このあたりの住宅地の相場が、坪当たり80万円から100万円です。30坪ほどお求めになるのがいいかと思います。なぜかと申しますと、最初のご取得ですし、お子様もお小さいです。とりあえず、ご無理のないところで、なおかつ、駐車場を設置でき、3LDKの広さを確保するとなると、30坪前後が妥当かと思います。となると、2400万円から3000万円が土地代金となります。建築資金25坪で坪当たり80万円とすると、2000万円ほどで、合計、4400万円から5000万円が全額です。この他に、私への仲介手数料、印紙代、不動産取得税、登記料、引っ越し代等を残す必要があります。したがって、土地は坪80万円までに、建物は、2000万円の合計4400万円が妥当と思います。200万円を残すことにすると、自己資金が少なくなりますが、もし、私の知っている銀行であれば、鈴野様の勤務先、年収であれば3400万円のご融資は大丈夫かと思います。これですと、35年ローンで、毎月元金返済が8万円、ボーナス払いなし、変動金利年1.8%で利息が毎月5万円ほど。合計毎月13万円ほどの返済となります。これをベースで、毎月支払い分を減らしたい場合は、ボーナス払いを併用していけば、年収からすると、あまり今の生活を変えることなく、新しい家に住むことができるでしょう。しかし、土地が見つかる前までに、ぜひファイナンシャルプランナーに診断を受けることをお勧めします。ためになるアドバイスが聞けるでしょう。私もそういった知識は多少なりとも持っていますが、専門ではありません。有料ですが、かかった費用は仲介手数料から引かせていただきます。」

「よくわかりました。早速ファイナンシャルプランナーを探してみます。そして、料金を立替えさせていただきます。本当に良いアドバイスをありがとうございます。」そう言って、満足そうな表情を見せた。

 

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