積水ハウス63億円だまし取られる 地面師とは2

平成12年千葉地裁の判決。積水ハウス事件とよく似た事件の判決が17年ほど前にあった。地面師によるこの手の事件は頻発している。

紛争の内容

① Xは、高名な芸術家Yが所有していた土地について、Yの登記申請委任状、印鑑証明書を偽造し、平成8年3月にYからXが本件土地の贈与を受けたとして、所有権移転登記手続き(原因:平成7年12月贈与)を行い、同年4月にXから宅建業者Cに売却し、所有権移転登記手続き(原因:売買)を行った。

② 宅建業者Cは、この土地を3筆に分筆し、その売却を宅建業者Bに媒介依頼した。

③買主A1は平成8年4月に1筆の土地(イ土地)を、買主A2は同年6月に1筆の土地(ロ土地)を、それぞれ媒介業者Bの媒介で売主Cから買い受け、所有権移転登記手続きを完了した。(つまり、それぞれの買主の名前が登記簿に記載されたということ)

④ ところが、芸術家Yは平成8年1月に死亡しており、その相続人はこの土地についての贈与を原因とする所有権移転登記はYに無断でなされたものであるとして、Xや買主A1、A2(以下「Aら」という)に対し、所有権移転登記の抹消登記手続きを求める訴訟を同年7月に提起し、平成9年2月勝訴判決によりAらへの所有権移転登記は抹消された。つまり、X、Aらの登記はなかったものとなって、Aらは土地を入手できなくなった。さらに加えて、土地はYの相続人のものになったということ。

そこで、Aらは、平成9年4月、登記官が所有権移転登記申請に添付された偽造の証明書を見過ごして登記を実行した結果、売買代金相当額の損害を被ったとっして、媒介業者B(株式会社)及びその代表者B2に対して損害賠償を請求するとともに、国に対しても国家賠償を請求した。

以上が、この件の顛末だ。

次に各当事者の言い分は次の通り。

買主Aらの言い分

媒介業者Bは、芸術家Yの遺族に確認するなどして、この土地の所有権移転の確実性を調査確認し、その調査結果いかんによっては売却の中止、売買契約の危険性をAらに助言すべき義務があったにもかかわらず、これを怠った。

媒介業者Bの言い分

登記簿上の所有者となっている売り主からの売買を媒介する場合は、YからXに贈与がどう行われたのか等の、つまり、所有権移転が真実に行われたかどうかについてまで町さし確認する義務はない。

この裁判の争点

媒介業者は、不動産の売買等を媒介するにあたり、売主と称する者が売却権限を有する真の所有者かどうかについて調査する義務があるものの、前登記名義人にまでさかのぼって調査する義務があるかどうか。

この裁判の結末

判決は、買主Aらの主張を認め、売買代金と弁護士費用相当額を損害賠償として支払うことを命じた。媒介業者Bに対し売買代金と弁護士費用相当額を損害賠償として支払うことを命じた。また、国に対しても賠償責任があるとした。

Xは別に、詐欺等で懲役刑を受けたのだろう。また、CがAらから受け取った代金の行方はどうなったのだろうか。宅建業者Bが別の裁判で、Bに返還するよう求めるのだろうか。Cがそのままだと、素人考えだけども、不当利得になるのだろうから、当然Bはそうしたのだろう。しかし、零細業者と思われるBは倒産したのではないだろうか。自分も、今は会長とはいえ、不動産会社で業務に携わっている現在、ここは本当に注意しなければならない。Bの言い分もわかる。しかし、判決があった以上、不自然と思われる売主には気を付けよう。媒介業者が全額損害賠償をしなければならない時代なのだ。国、この場合、法務局に当たるのだが、専門家を欺くような技術が普及しているのだ。この事件のXも地面師と言える。金額が大きいので、騙されたほうは黙っていない。したがって、必ず裁判では負ける。でもなぜやるか?それは一時取得した金を何らかの返済等に充てて、自分は捕まる覚悟をしているのかも。詳細は不明だが、多分この事件は民事だ。刑事事件も立件される。真の所有者に何の落ち度もないのに、知らないところで、自分の不動産が売買されている。すぐ気づくので、不動産がとられるということもないが、裁判、弁護士費用もばかにならず、その間の気苦労も素人ゆえ、大変なものだ。しかし、この地面師たちはこれからも頻繁に暗躍する。専門家であっても気を引き締めねば。